令和6年

④ 魅力ある水産業の実現に向けた取組【令和6年第1回定例会 常任委員会】

会議日:令和6年2月29日【 常任委員会 】答弁要旨
環境農政常任委員会

魅力ある水産業の実現に向けた取組

大村 悠

魅力ある水産業の実現に向けた取組についてお伺いしたいと思います。

まず、磯焼け対策について、県は早熟カジメ等を大量生産する施設を整備して船に移植して藻場を再生していくということですが、これまでの成果と令和6年度以降の取組についてお伺いします。

水産課長

県は、これまで早熟カジメを人工的に培養する技術の開発に成功し、昨年10月には種苗を大量に生産できる培養施設を水産技術センターに整備しました。あわせて、ワカメ養殖の手法を応用し、早熟カジメを海に移植する技術も確立いたしました。令和6年度からは培養施設で早熟カジメの胞子を付着させた種糸を年間延べ2万メートル生産し、この種糸を大体10センチ程度に切ったものをロープに取り付け、そのロープを海底に設置するということで、そのロープの上でカジメが海の中で成長し、秋には成熟して胞子を放出し、周囲の岩礁に早熟カジメが繁殖するという形で藻場を再生していこうと考えております。

しかし、早熟カジメの種糸を取り付けたロープを県内各地の海に設置するには多くの人手が必要となることから、漁業者や市民団体のほかに船舶を所有するマリーナ事業者、それから潜水技術を持っているダイビングショップなどにも直接協力を働きかけていきたいと考えています。

令和6年度につきましては、本県の沿岸海域に合計で10ヘクタールの藻場を育成する計画で進めていこうと考えております。

大村 悠

様々な事業体に協力を仰ぎながらということだと思いますが、これは報酬とかはなくボランティアでやってもらうという認識でよろしいんでしょうか。

水産課長

藻場の再生の必要性、それからブルーガードの効果について協力していただける方に丁寧に説明して理解を得ることで、この取組に対して賛同していただけることで、ダイバーにボランティアとして参画していただくことを考えています。そのため、報酬等についてはお支払いするということは現在予定はしておりません。

大村 悠

県の考え方、今確認させてもらいました。皆様も事業をしている方々なので、しっかりと理解してもらって、全体の社会問題だということを認識してもらうということが重要だと思いますが、なかなか難しい部分も今後出てくると思います。工夫をしながら粘り強く進めていただくことを要望したいと思います。

次に、定置網漁のスマート化についてお伺いします。

AIを活用して操業の効率化を促進するということですが、これまでの取組状況と来年度の事業内容についてお伺いします。

水産課長

これまでの取組といたしましては、定置網の遠隔監視装置の開発に向けて、相模湾内の定置網に魚群探知機、それから水中カメラを備えたブイを設置しまして、長距離無線ランを用いて約2キロ離れた水産技術センターの相模湾試験場、これは小田原にあるものでございますが、そこで定置網の中を泳いでいる魚を画像データ、これは動画なんですけれども、これを送ることに成功しました。令和6年度につきましては、この送信された魚の画像データをAIで解析して魚種を判別するシステムの開発を進めていきたいと考えております。

このシステムの開発により陸上から定置網の中の魚の種類、それから量を正確に把握することができ、出港する・しないの判断をすることで、その分の時間で網の修理の時間を確保するなど、作業時間を有効に使えるようにして操業の効率化を図っていきたいと考えております。

大村 悠

このスマート化については、これまでも様々議論させてもらいましたが、魚の種類、量が分かれば出港の判断や、出荷の目安になるということで、前回の委員会でも答弁いただきました。そうした中で実績が出てきて魅力的だと思うんですけれども、その一方で、費用的な面で課題が出てきます。今、実証実験という段階で取組を進めていますが、いざ、それが実装できるとなったときに、導入するために費用をかけてやってもらうと思うんですけれども、そのあたりは協同組合会員とかになるのか、どういった実装を今考えているのか、イメージしているのか、お伺いします。

水産課長

委員もおっしゃられたとおり、新しいものを開発したばかりというのは、その投資というか設備にお金がかかるものです。ですので、その辺につきましては民間というか漁業者が実際に導入していただくということを前提に、我々としても開発段階からコストの削減を図っていきたいと考えております。

また、まずそれを導入していただく経営体ですけれども、定置網漁業につきましては漁業協同組合単位で運営しているというところがございますので、そういったところ、つまり運営費を割としっかり持っていらっしゃるところから、まず導入していただくというような導入のその支援策ということも考えていきたいと、そのように考えております。

大村 悠

分かりました。せっかくこうやって実証実験をして形になってきているからこそ、導入しなければこの実証実験も意味ないものになってしまいますので、そういった導入に向けたイメージというものも引き続き持ちながら、この取組を進めてまいりたいと思います。

次に、魚類と養殖技術開発についてお伺いします。マグロの血合い肉をサバに食べさせてということで価格を高めるということなんですが、これまでの取組状況と来年度の事業内容についてお伺いします。

水産課長

県水産技術センターでは、昨年の11月からセンターに隣接する海域に、5メートル四方、深さ4メートルの生けすを2基設置しまして、平均全長が15センチ、35グラム程度の小型サバを約500尾使って養殖を開始いたしました。現在、サバは順調に成長しておりまして、2月の時点で平成21センチ、116グラムに成長しております。このまま飼育を続けまして、今年の5月頃には養殖したサバの出荷試験を行いまして、料理人等による品質の評価を行いたいと考えております。また、令和6年度からは抗酸化作用の高いマグロの血合い肉を餌として与えて、病気に強く健康的な魚を育てるといった研究も進めていく予定でございます。

大村 悠

マグロの血合い肉は人間にとってもいいという話で前回の委員会でも説明させてもらいましたが、こうやって魚に対しても活用できるというところで、血合い肉を発信したいんだなという気持ちがすごく伝わってきました。

次に、栽培施設の整備について、新たに整備する栽培漁業施設ではどのような魚種の種苗生産に取り組んでいくのかということと、どのような機能を設ける予定なのか、あわせてお伺いします。

水産課長

新たに整備する栽培施設では、近年漁獲量が増加しているトラフグ、それから砂浜に生息しプランクトンを餌とすることから磯焼けの影響を受けないハマグリなど、海洋環境に適した魚類の種苗生産に取り組んでいくこととしております。また、今後も想定される海洋環境の変化に対応して新しい漁種の種苗が生産できますよう、汎用性が高い施設を整備していきたいと考えております。

大村 悠

次に、今回新規事業として報告されています海業の推進について、漁業経営の多角化により漁業所得を向上させるとありますが、具体的にどのような取組なのかということと、来年度の事業内容についてお伺いします。

水産課長

近年、海洋環境の変化などにより漁獲量が減少しており、漁獲物の販売だけでは漁業所得の向上を図るのが難しくなっていることから、魚を捕る以外にも新たに収入源を確保して漁業経営の多角化を図っていく必要があります。具体的には、マグロが有名な三崎、定置網漁業が盛んな小田原、マリンレジャーと共存する湘南など、漁業の特性が異なる地域ごとに、その地域の魅力を生かし、漁業者が主体となって民間事業者などと連携して取り組む海業のモデル事業を県が支援することにより、海業のビジネスモデルを創出していきたいと考えています。

また、漁業協同組合や水産関係団体などを対象に聞き取り調査などを行うことで、海業に活用できる地域の海や漁業の持つ魅力を掘り起こし、新たな海業の企画を提案していきたいと考えております。

さらに、そうした取組により創出しましたビジネスモデルや、新たに提案する海業の企画を生かして、漁業者とパートナーとなる企業とのマッチングを行い、海業の事業化を図っていきたいと考えております。

大村 悠

漁業者の所得向上に向けてということで、今答弁いただきました。この取組によって市場、マーケットが広がるということは理解するんですが、なかなかこういった取組が事業者の所得向上につながっていないという漁師の方の御意見もいただいています。まず、そのあたりは、県としてどのように認識しているのか、お伺いします。

水産課長

令和6年度から取り組むこの海業の事業でございますが、まず、漁業者が主体となって取り組むその海業のビジネスモデルをまずつくります。そして、その所得向上の効果につきましては客観的に評価をして、それを成功事例として漁業者に示していくということで、漁業者の理解を深め、運用を推進していきたいと考えております。

大村 悠

そうした上で、漁業者の所得向上ということなんですが、具体的に、所得向上というと数円でも向上になっちゃうと思うんですけれども、県の狙いとしてどの程度増やしたいとか、その目標数値みたいなものを持っていますか。

水産課長

所得の向上といいますと、実際の例ではシラスの漁業者が3,000万円を稼ぐとかそういった例もございますが、水産業がまず魅力的な産業として、新たに入ってくる方がやってみたいと思えるだけの収入、そこを目指して所得の向上というのを取り組んでいきたいと考えております。

大村 悠

実は先日、金沢区で金沢漁港祭りというのがあって、大雨だったんですが、本当に来場者が多くにぎわっていて、その運営している方々と意見交換したときに、やはりもっともっとやってほしいという参加者からの声も聞いているんだけれども、事業者からは毎月やっていたら自分たちの仕事がままならなくなっちゃうという話を聞ききました。収入源としては増えるかもしれないんだけれども、もともとの事業の収入が減ってしまう可能性もあるから、なかなかそういった新規事業に取り組むのが難しいという御意見もいただきました。

そういった中で、様々周辺の資源を活用して所得向上に向けて取り組んでいくということで、事業者の理解ももらいながらということだったんですが、なかなか新規事業に踏み切るのも簡単なことではないと思いますし、その中で事業者とのマッチングについて、そのマッチングする事業者って、どういった事業者をイメージされていますか。

水産課長

これ、各地域によってそれぞれ民間の事業者の方、いろんな方がいらっしゃると思います。例えば地元でレストランをやられている方もいらっしゃれば、スーパーをやられている方もいらっしゃると思います。ホテルだとかいろいろあると思うんですけれども、その地域にマッチした形態というのは、やはりそれぞれあると思うんです。そういったところと漁業者がマッチングするんですけれども、委員が心配されたように何から何まで漁業者がやったら、それこそ本来の漁業ができなくなってしまう。自分たちができない部分を民間の事業者と協力することで、そこは補ってもらう。自分たちは、まず漁業者としてはしっかり漁業をしていただいた中で、その産物を有効に活用できる、あるいは空いている時間とかを有効に活用するということで、決してこれまでの漁業者の操業を抑えてということではなく、双方生かせるような形でのマッチング、これを考えていきたいと思っております。

大村 悠

実際、漁師の方とそういった意見交換させてもらったときに、結局そういった業者だけがもうかっちゃうんじゃないかというところで、なかなか自分たち、漁業者の所得向上につながるとはなかなか考えづらいということを言われたのが、リアルな現場の方からの声だと思います。いろんなもので事例紹介だとか展開していくということですが、とにかく漁業者の所得向上という目的を決して忘れないで、事業者に寄り添って取組を進めていただくことを要望いたします。

水産課長

ただいま委員がおっしゃられた、民間企業ばかりもうかってしまうということなんですけれども、これから6年度、県として取り組もうとしている海業につきましては、漁業者、民間事業者のほかにも地元の自治体ですとかそういった方も入っていただいたそういう組織体をつくっていただきまして、そこでしっかり漁業者の所得の向上につながるということが明確に示されたものについて県は支援していくということで進めたいと考えております。

大村 悠

次に、神奈川の魚販売促進についてお伺いしたいと思います。県は、マグロの血合い肉を活用した地域特産品を創出する取組への支援をするということですが、これはどのような取組なのか、お伺いします。

水産課長

三崎マグロが有名な三浦市におきまして、現在、抗酸化作用の高いセレノネインを豊富に含むマグロの血合い肉を利用した特産品創りが進められております。三浦商工会議所の会員であるマグロ取扱業者や加工会社、それから三浦市などにより設立されました、まぐろ未病改善効果研究会では、未病改善に役立つマグロの血合い肉を使った料理メニューや加工品の開発に取り組んでいるところでございます。

また、新たな特産品を広くPRするために、マグロの血合い肉のネーミングを現在募集しています。さらに、ほかのマグロの産地との差別化を図るため、セレノネインの効果に係る特産品の品質を保証する認証制度の創設、それから運用を計画しているところでございます。

県は、三浦市と連携して同研究会の取組を支援するため補助金を交付するとともに、引き続き特産品の開発に係る技術的な支援をしていきたいと考えているところでございます。

大村 悠

これも研究結果の成果だと思いますし、これからの強みとして取り組むことだと思うんですが、やはり実際に出たときのイメージってすごい重要だと思います。今ネーミングを募集しているとのことですが、未病と言ったところでどこまで伝わるのかなというのが僕の正直な感想なんです。健康志向というのもそうなんですが、やはりそれだけではなく、わくわくするような見せ方とかプロモーションということも重要だと思います。最初の第一報は重要ですので、しっかりと検討していただくことを要望します。

最後の質問に入る前に、この報告資料の中で目的として漁業者の所得向上と、もう一つ、神奈川らしい都市型水産業を振興するということですが、この神奈川らしいというのは、いわゆるどういったことなのか、お伺いします。

水産課長

本県の水産業につきましては、漁獲量ですとか漁獲額、その収量数、いずれも全国に占める割合というのは非常に小さいものでございます。ですので全国一律の漁業生産量、漁業生産額といったことを基準とした水産振興施策というのは、なかなか本県にはマッチしないのかなということもございます。

その一方で、本県、首都圏に近いということで交流人口や他の産業との接点が多いということで、そういったことを活用していく、首都圏に近く他の産業との設定が多い、交流人口が多いという、そういう本県らしさを生かした水産業を展開していこうということでございます。

大村 悠

地産地消ということもそうですし、ブランド化ということが重要であるということで今理解をしました。

そういった特徴を強みを生かして今後どのように魅力ある水産業の実現に向けて取り組んでいくのか、最後にお伺いします。

水産課長

先ほど、全国一律の漁獲量、漁獲金額の物差しが本県にはマッチしないということでお伝えさせていただきました。その一方で、交流人口、他の産業との接点が多いということで、海業の取組といたしましては、例えば漁業者が主体となった水産物の販売施設ですね、こういったものを漁業者が運営する、あるいは漁船によるクルージングを行う、それからダイビングの案内業を行うなどということで、漁業経営の多角化を図っていきたいと考えています。

また、そのブランド化というお話もありましたが、消費地に近い、朝取りですとかホウセンドという付加価値、これを活用できるということで、魚を高く売るということができますので、そうしましたことから、先ほどお話ししました魚類養殖につきましても、高品質で付加価値の高い水産物を生産していきたいと考えております。

このような本県の強みを生かして漁業所得の向上につながる神奈川らしい都市型水産業の展開を図っていきたいと考えております。

大村 悠

様々、確認させてもらいましたけれども、何よりも漁業者の所得向上ということを目的に様々な検討を進めてもらいたいと思います。

今、漁師の高齢化も進んでいますし、事業者の減少、環境変化など課題は山積しています。魚が食べられるということも当然ではなく、そういった方々がいらっしゃるからということを念頭に、漁業者の所得向上に取り組んでいただくことを要望して質問を終わります。

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