令和6年

② 持続可能な農業の構築に向けた取組【令和6年第1回定例会 常任委員会】

会議日:令和6年2月29日【 常任委員会 】答弁要旨
環境農政常任委員会

持続可能な農業の構築に向けた取組

大村 悠

持続可能な農業の構築に向けた取組についてお伺いをします。

まず初めに、スマート農業推進事業費補助の令和5年度の実施状況と、期待される事業効果についてお伺いします。

農業振興
課長

スマート農業推進事業費補助は、一般的に高額なスマート機器の導入促進を図るため、共同利用などにより産地が体系的にスマート技術を導入することに対する補助と、個別の農家などが小型のスマート機器を導入することに対する補助の2種類のメニューを設定しています。いずれも補助率は3分の1で、それぞれ補助額の上限を500万円、100万円としています。

令和5年度の実施状況ですが、産地への導入としましては水稲、お米の農作業を請け負う二つの作業受託組織から、農薬や肥料の散布に用いるドローン、あるいは収穫した米の乾燥程度を離れた場所からも把握できる乾燥機など、個別農家への導入としては9件、ロボット草刈り機やGPSによる直進アシスト型のトラクターなどの申請がありました。

これらの事業効果についてですが、産地への導入におきましては、生産者の減少や高齢化が進んでいる水稲の作業受託組織の支援によりまして、産地の維持が図られるものと考えております。また、個別の農家への導入では、導入した農家の農作業の効率化とともに、今後、周辺農家にも普及が進むことを期待をしてございます。

大村 悠

本年度については今確認させてもらいました。令和6年度の予算計上では、スマート農業推進事業費補助として1,960万円計上されていますが、この積算根拠を件数なども含めてお伺いします。

農業振興
課長

積算根拠としましては、まず先進的産地育成事業のほうにつきましては、総額で1,500万円ほどの機器を導入することを見込んで補助額が1産地当たり500万円、それの二、三産地ということでございます。

もう一つ、個人向けの補助につきましては、1戸当たりの金額としましては、総事業費を約180万円と見込みまして、それの3分の1掛ける16戸に導入するということで960万円、これの合計ということでございます。

大村 悠

次に、農業分野の脱炭素に向けた取組についてお伺いします。まず化石燃料を使用しない施設栽培への転換に向けた脱炭素・低コスト農業技術確立等推進事業の研究開発の取組状況についてお伺いします。

農政課長

脱炭素・低コスト農業技術確立等推進事業につきましては、農業技術センターで温室栽培のイチゴを対象に、日中の太陽熱を温室内の資材に蓄熱をさせ、気温が下がる夜間の暖房に活用する無加温温室の実用性の検証や、石油由来でない資材を活用した栽培技術の確立を進めるとともに、環境に配慮した技術で生産された農産物の消費者の購買意向把握等の研究に取り組んでいます。

令和6年度につきましては、今年度に完成をしました無加温温室の室内の温度等の環境データを収集し、太陽熱の保温・蓄熱効果を確認するとともに、秋以降は実際に温室内でイチゴを栽培し、収量や果実品質などを従来の化石燃料の暖房機を用いた栽培方法と比較をいたします。また、環境に配慮した技術で生産された農産物の購買意向を明らかにするために、本年度実施したアンケートの調査結果を解析し、農産物の商圏や購買者層等の傾向を把握いたします。

大村 悠

購買者のところの調査、傾向を分析するということだったんですが、こちらについてはもう既に進行中ということでよろしいでしょうか。

農政課長

アンケートにつきましては、今年度1月の下旬から2月の下旬に1,200名を対象にウェブで行っております。現状で購買者が現在購入する場合に環境に配慮したラベルですとか着目する状況ですとか、そういうものを調査をいたしております。

大村 悠

先ほどの脱炭素の自分事化でも、消費者教育・理解ということで議論させていただきましたが、そういった中で購買者のそういった傾向を把握することは重要なことだと考えています。そうした中で、そういったデータって今後どのように生かしていこうと考えているのか、お伺いします。

農政課長

まず、今後はこの研究をしております無加温温室でのCO2の削減の状況を見える化をいたしまして、その見える化の状況をデータを基にアンケート調査を行いまして、それで、どの程度販売額が上昇しても購入していただけるだとか、そういうことを確認をしていきます。その状況が確認できた段階で、実際に農業者等に情報としておつなぎしていけるようにしていきたいというふうに考えております。

大村 悠

ぜひとも有効なデータだと思いますので、農業者や小売の方々に向けても、有効活用していただくことを要望したいと思います。

次に、かながわ農業アカデミー脱炭素教育設備等整備費について、今年度の実施状況と来年度以降の実施予定についてお伺いします。

農業振興
課長

かながわ農業アカデミー脱炭素教育設備等整備費につきましては、令和8年度までにラジコン草刈り機などの電動の農機具やドローンの導入、また温室3棟へのヒートポンプの導入、これらの農業用機械や施設に電力を供給する太陽光発電施設を備えた実習棟などの施設整備、こういったことを行うことで脱炭素農業モデルによる事業や栽培実習を行い、また県内農業者のモデルとしようとするものでございます。

このうち令和5年度については、温室1棟へのヒートポンプの導入整備、また、リモコン草刈り機その他の小型電動農機やドローンの導入を行いました。導入した農機具につきましては、随時栽培実習などでの活用を始めておりまして、ドローンについては来年度からカリキュラムに導入するための職員向けの操作研修を実施いたしました。

令和6年度以降も、導入した施設や機械を活用した事業や、農業者向けの研修による脱炭素型の農業経営に取り組む人材育成を進めながら、令和8年度の完成を目指して、太陽光発電施設を備えた実習棟の整備に向けて既存施設の除却などの準備を進めてまいります。

大村 悠

次に、令和6年度新規事業の水田脱炭素促進事業費では、水田から発生するメタンガスは温室効果が高いということから、そのメタンガスの発生抑制の効果などを検証していくということで報告いただきましたが、検証することになった経緯についてお伺いします。

農地課長

二酸化炭素の訳25倍の温室効果を有するメタンガスが排出、日本では約4割が水田由来とされています。農林水産省では2030年度、温室効果ガス削減目標を2013年度比46%減としており、農林水産省地球温暖化対策計画を改定し、農林水産分野における地球温暖化対策を最大限推進するというふうにしております。

同計画では、農地土壌に関連する温室効果ガス排出削減対策として、お米の生産に伴い発生するメタンガスの排出削減対策の取組を推進しているというところでございまして、中干し期間の延長の普及率を2030年度に30%というふうに目標を掲げております。そこで、本県におきましても、メタンガスにおける環境負荷を軽減するため排出量削減に取り組む必要があるということは急務であるということから、まずはメタンガスの発生が県下でどのようになっているか現状を調べるため、今回の検証を行うというふうにしました。

大村 悠

2030年までに取り組む必要性が30%という方針ということですか。

農地課長

今から比べて30%減らす計算です。

大村 悠

そういった中で、中干しの期間延長によるメタンガスの発生抑制効果と、米の収量や品質への影響について検証するということなんですが、どこでどのような検証をしていくのか、お伺いします。

農地課長

本県には約3,500ヘクタールの水田がありますが、そのうち7割の水田は県が所有する基幹的農業施設であります農業用の取水堰や用水路からその用水を供給管理し、水田作が行われております。そして、これらの施設は地域の農業者によって設置された団体である土地改良区が管理しており、主に相模川の左右岸、そして酒匂川の左右岸の四つの土地改良区で管理をしております。そこで県内各地域に適した営農方法を検証するため、これに水田の区画整理を行った伊勢原を加え、計画では来年度から3年間かけて相模川水系で3か所、酒匂川水系2か所の合計5か所で検証するというふうにしております。

なお、検証内容ですが、メタンガスの発生量のほか、土壌の水分量や営農時の水管理の方法、肥料はいつまくかなどの営農方法を調査し、さらにお米の収量、品質が分かるよう、収穫後にはお米に含まれる成分調査なども行う予定でございます。

大村 悠

検証内容については今確認をさせてもらいました。そういった中で次年度、そういった検証を進めていくということなんですが、検証の結果というのも、農家さんの皆さんに知ってもらって実践につなげてもらうということが重要だと思っています。農家さんに対してどのように周知をしていこうと考えているのか、お伺いします。

農地課長

これらの関係する5土地改良区には約8,300名の組合員がいます。既に令和5年8月と10月には打合せ会を開催しておりますが、打合せ会の中で土地改良区のほうからも調査結果について組合員に説明してほしいという声がありますので、今後、組合員を対象とした勉強会を開催して周知していきたいと思います。

また、各土地改良区が発信しております広報紙の土地改良区だよりや、圏域の組織である神奈川県土地改良事業団体連合会が主催する講習会等も活用して、農家のほうには周知したいと思います。

大村 悠

ぜひとも、この検証結果については有効活用してもらいたいと思います。また、先ほど購買者がどのぐらい高くなっても買うかなど調査をするということだったんですが、そういったことも併せて農家の皆さんに知っていただくことによって、実践につながりやすい、効果も出ると可能性がありますので、課を超えてしっかりと連携していただくことを要望します。

この質問、最後になりますが、持続可能な農業を構築していくためには、スマート農業の推進、脱炭素の取組を計画に進めていくことが重要だと考えていますが、今後、県としてどのように取り組んでいくのか、お伺いします。

農政課長

県では、令和5年3月に、かながわ農業活性化指針を改定し、その施策としましてスマート農業技術の導入よる生産性の向上を図るとともに、燃油等の価格高騰対策や脱炭素につながる環境に配慮した農業の推進を位置づけております。そのため、来年度予算案に計上したこれらの事業に積極的に取り組んでいくとともに、その成果を生産現場に浸透させていくことにより、かながわ農業活性化指針の着実な推進を図ることで、計画的に持続可能な農業の構築を図ってまいります。

大村 悠

分かりました。こういった先進的な取組を進めていくという県の姿勢も分かりますが、本来の農家さんの精神だとか、自然への考え方だとか、そういったところも、いま一度立ち直って県の農業振興についてしっかりと取り組んでいただくことを要望してこの質問を終わります。

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