会議日:令和6年10月1日【厚生常任委員会 質問】答弁要旨
「神奈川県立保健福祉大学の保健師養成課程の大学院化」
公立大学法人神奈川県立保健福祉大学の保健師養成課程の大学院化についてです。
まず始めに、県立保健福祉大学では現在どのように保健師を養成しているのか確認します。
県立保健福祉大学では、現在、保健福祉学部の看護学科において保健師を養成しています。看護学科の定員90名のうち30名の枠で保健師養成課程を履修でき、看護師と保健師の二つの資格を取得することができます。定員30名の枠に対して、直近5年間の履修者は毎年15名程度であり、そのうち卒業後、保健師として就業する学生は5名程度となっております。
保健師枠が30でそのうち履修されているのが15名程度で、就職されているのが5名程度という
ことですが、この数だけ見てみると、なかなか、その出口の就職まで結びついていないということが数字上では分かりますが、この就職されていない要因はどう分析をされているんでしょうか。
この定員と就業実績のミスマッチになる要因について、主に三つあると考えております。
まず一つ目は、令和4年度の国のカリキュラム改正の影響です。社会の変化に伴いまして、看護師や保健師にも高度な能力が求められ、どちらも取得すべき単位数が増加しました。保健師は看護師資格を有しなければ就業できませんので、看護師と保健師の両方の資格の取得のための時間確保の困難さから保健師課程の履修を避ける傾向があり、ここでの保健師養成が減少しています。
二つ目としましては、保健師就業への動機づけの機会が少ないことが挙げられます。学部での養成の場合、学生が看護師資格を有していないため実習は見学中心となり、保健師業務の魅力の理解ですとか就業意欲につながりにくくなっております。
三つ目といたしまして、就職活動のスケジュールのねじれがございます。保健師の自治体試験は例年4年次の4月から7月となっていますが、看護師の就職は実習前の4年次の5月までに決定してしまうため、保健師実習などでの学びを保健師就業への動機づけにすることが難しくなっております。
そういった課題を踏まえて、なぜこのたび保健師養成課程を大学院化にするのか伺います。
現在、健康寿命の延伸に向けた地域での健康づくりや、自然災害、パンデミック等に対する健康危機管理体制の構築など様々な健康課題に対応できる、より高度な能力を備えた保健師の教育・育成が必要とされており、そうした中で、日本看護協会等の関係団体からは、保健師教育の大学院化が求められている状況があります。
一方で、先ほど申し上げましたけれども、現状の保健師養成課程における課題としまして、保健師課程の履修者が少なく、また、保健師課程を履修して保健師資格を取得しても、大半が保健師ではなく看護師として就業するため、保健師養成定員と就業実施にミスマッチが生じているという現状がございます。
そこで、大学院化によりまして、保健師として就業したい指向性の高い学生を確保し、現場の課題解決に向けてリーダーシップを発揮できる実践力の高い保健師を養成するとともに、保健師としての就業に結びつけていきたいと考えております。
神奈川県としての考え方、今確認させてもらいました。
全国の保健師養成課程の大学院化の状況はどうなっているのかお伺いします。
全国において保健師養成課程の大学院化が進み、令和5年4月現在、22校の大学院が設置されています。具体的には、まず、平成23年度に大分県立看護科学大学大学院が設置されて以降、国公立大学を皮切りに大学院化が進み、令和5年4月現在、国立7校、公立6校、私立9校、計22校の大学院が設置されております。
その結果、平成25年には全国保健師養成校237校のうち大学院は2校、全体の約0.8%であったのに対し、10年後の令和5年には全国の保健師養成校308校のうち大学院は22校に増加し、全体の約7.2%と大幅に増加しており増加傾向が顕著になっております。
一番最初に大学院化したので平成23年の大分ということで今答弁をいただきました。
そういった状況の中で神奈川県が、今回、大学院化を検討しているわけで、もちろん他県の状況などを分析しながら、神奈川県としてこういった方向性を示したと思います。
先ほどのミスマッチなどの課題も含めて、大学院化を進めるという中で、そういったミスマッチが解消されつつあるとか、そういった好事例を分析していたらお伺いしたいと思います。
今、ほかの他県の大学院化の事例について、すみません、手元に分析したような、ちょっと資料がございませんので、そういうものを申し上げるということはなかなか難しいので、先ほど申し上げたとおり、例えば関係団体である日本看護協会などからは、保健師に対して高度な能力を持った保健師の養成が必要であるといったような要望が出されておりまして、保健師につきましては、大学ですかとか大学院化といったような高度化が進んでいくというふうに考えております。
先ほどの答弁の流れの中で、全国的に増えているからということではなく、こういった方向性を示したからには、具体にどういった課題を解消したいのか、大学院化を通して目指したいビジョンを示すなど、今回の変更に関しては重要だと思います。
もちろん他県の状況もしっかりと分析しているはずなので、今後大学院化に向けた施策にしっかり反映できるように分析を続けてもらいたいと思います。
次に、令和11年度に移行する大学院の概要についてお伺いします。
令和11年度に開設する大学院は、仮称ですが、公衆衛生看護実践コースとしまして、大学院博士前期課程2年間で、終了時に保健師国家試験受験資格と修士の学位が授与され、定員は5名程度を予定しています。
定員は5名程度を考えているとのことで、、現状として保健師枠が30あって、そのうち15人が履修をされているという状況の中でこの保健師の養成定員が減ってしまうということなんですが、どのように考えているのかお伺いしたいと思います。
大学院への移行後は、保健師養成制度には現行の30名から5名程度となりますけれども、就業保健師としての実養成数としましては現行と同水準の毎年5名程度を確保していきたいと考えております。
また、就業保健師の確保といたしまして潜在保健師の活用を検討してまいります。具体的には、保健福祉大学の実践教育センターにおきまして、保健師免許を保有している潜在保健師に対しまして、令和10年度をめどに地元での実習体験を含むリカレント教育を実施し、県内自治体等への保健師就業の橋渡しについて取り組んでまいりたいと考えております。こうした取組を通じまして、保健師養成における質と量の確保を目指してまいります。
潜在保健師については今答弁いただきました。
5名程度をしっかりと確保していくということですが、先ほどの、一番最初の質問で現状を確認したところ、枠が30に対して就業時は最終的には就職は5名程度というのが、5名ではまだまだ少ない、この数字に関しては課題であるという私の感覚でした。
そういった中で、今回定員が5名ということは、その就職の最終的な数字ってそこまで変わらなくなっているじゃないですか。その辺りは、県としては5名で十分と認識しているのか、県としての考えをお伺いしたいと思います。
近年、県全体の状況でございますけれども、令和2年度から湘南鎌倉医療大学が定員20名で、令和4年度からは川崎市立看護大学が定員30名で保健師の養成を開始しております。県全体の養成数としては減少にはならないというふうに考えておりまして、また、県内の保健師養成校、12大学の定員が345名ということで、令和5年度の国家試験受験者数が242名であるのに対しまして、県内の自治体の保健師募集数は年平均で70名から80名というふうになっておりますので、今後募集数が倍増しても対応可能であるというふうに考えております。
そうしたことから、保健福祉大学におきましては、県内初の大学院化により、現場の課題に解決できるような実践力の高い保健師を養成する機会というふうに考えております。
続いて、保健師養成の大学院化のメリットについてどう分析しているのか確認します。
メリットは主に三つあると考えております。
まず一つ目として、十分な学習時間の確保がございます。学部での4年間での看護師の基礎力を身につけ、看護師資格を有した上で大学院に進学することにより、大学院の2年間で保健師養成の十分な学習の場が確保できると考えております。
二つ目といたしまして、大学院での継続的なフィールドワークによりまして、現場の課題解決に向けてリーダーシップを発揮できる実践力の高い人材の育成が可能になると考えております。
三つ目といたしまして、大学院化によりまして、保健師として就業したい指向性の高い学生が進学してくるため、修了者のほぼ100%が保健師として就業することによりまして、就業者数は現状と変わらず5名程度を維持でき、より質の高い人材の輩出が可能になると考えています。
一方、課題についてもどう考えているかお伺いします。
保健師としての就業意欲の高い学生にとっては、大学等を出て保健師資格を取得しストレートに就業するという選択肢がある中で、いわばオハナシ教育となる保健福祉大学の大学院を選んでもらえるように、学生や保護者にアピールしていくことが課題というふうに考えております。
そこでまず、この大学院で学ぶ意義を明確にしまして、フィールドワークを通じて、新たな健康課題や健康危機など、社会のニーズに対応できる実践力の高い保健師を養成することなどを学生にしっかりアピールし、選ばれる大学院を目指してまいります。
また、大学からの内部進学も視野に入れまして、他の基礎教育の中で公衆衛生看護学や地域への興味・関心の種まきをしておくことや、学生の経済的な負担のため、昨年度から県で制度化しました神奈川県保健師修学資金貸付事業の活用を促すことなど工夫をしてまいりたいと考えております。
課題に対しての対策について今答弁いただきましたが、先ほどもお話しさせていただきました社会的な流れだから大学に行かせたいといった漠然としたものではなくて、県としての考えやビジョンを明確にしないと、魅力の発信はなかなか難しいと思いますので、いま一度、その他県の状況も踏まえてしっかりと県としての方向性も明確に示すことを要望します。
今、課題等について貸付けなどのお話もありましたが、今回大学院の2年間の上乗せ教育ということで、実践力の高い保健師を養成するという考えは理解します。
一方で、大学4年間の学理教育の中で保健師資格を取得して就業を希望する学生もいらっしゃると思うのですが、そういった学生に対して県としてどのように考えているかお伺いします。
大学4年間の学部教育の中で保健師資格取得を目指す学生に対しては、県内には県立保健福祉大学のほかに4年間で保健師を養成する大学が10校ございます。学部での保健師教育を希望する学生の受皿になると考えております。
県では、保健師を含む看護職員を目指す学生が、それぞれの意向に応じた進路選択ができるようリーフレット等を活用して、行政施設の就業年限等を含め様々なコースに関する広報を実施しておりますので、引き続き、保健師が魅力的な進路として学生に選択されるよう広報に努めてまいります。
今回の大学院化に伴いまして関係団体等からも意見を聞いたと思いますが、どういった声があったのかお伺いします。
関係団体からは、県内初の大学院化として様々な選択肢があるのはいいことであるですとか、保健師にデータ分析を基礎とした事業化、施策化に向けた能力が求められている中で教育の高度化が必要であり、大学院化はよい方向との意見が伺えました。
また、市町村からは、ニーズが多様化している中で、その場で臨機応変に判断して動けるスキルが求められているため大学院化には賛成。意欲、能力の高い保健師を養成してほしい、大学院化で2年間のフィールドワークにより、地域の実際の活動を学生のうちに教育の一環として体験できるのはよいことであるとの意見で賛同が得られております。
今後、検討して進めていくわけですが、先ほどの魅力発信にも関連しますが、今後高校生や、また中学生等への周知、どのように進めていこうと考えているのかお伺いします。
学生への周知につきましては、10月に文部科学省に対し、看護学科における保健師課程募集停止を報告した上で、11月以降、令和8年度看護学科入学希望者に対して、学部での保健師養成の募集停止について周知を行ってまいります。
具体的には、記者発表や大学のホームページ、大学案内への掲載をはじめとした広報や、高校訪問、オープンキャンパス等大学実施の各種説明会等を通じ幅広く周知していく予定となっております。
最後に、大学院における保健師養成課程ではどのような保健師を養成していこうと考えているのか、養成する保健師像について確認したいと思います。
養成する保健師像といたしましては主に三つあると考えております。
その一つ目といたしまして、他職種と連携・協働し、ヒューマンサービスのミッションに基づいた地域のシステム構築に寄与できる保健師。
二つ目といたしまして、健康長寿の実現に向け、県の健康政策や地域の健康づくりに貢献できる保健師。
三つ目といたしまして、地域における健康危機管理能力に強い保健師を考えておりまして、地域・社会に必要とされる質の高い専門人材を養成していきたいと考えております。
考えについては理解しますけれども、これは、この大学院化でなくてもこういった人材って育てなければいけないと思います。
その中で、質を高くということをより明確に分かるように、県としての方向性、またビジョンをしっかりと示してもらいたいと思います。
それでは、この質問の要望を申し上げます。
少子・高齢化が急激に進む中、保健・医療・福祉それぞれの分野において、地域や職域のリーダーとなる保健福祉人材を育成する総合的人材養成の拠点として県立保健福祉大学に求められる役割はますます大きくなると認識をしています。
今後も、成績が優秀というだけではなく、社会の変化に対応できるより高度な能力を備えた保健師の育成・確保することが重要であり、大学院化の魅力の発信についても積極的に取り組んでいただくことを要望します。
また、リカレント教育により潜在保健師を活用するということですが、しっかりと現状の数の把握も含めて分析をして、地域社会に貢献できる人材の育成に向けて、県と大学が連携して取り組んでいくことを要望します。
私のほうから一つだけ答弁させていただきます。
今、大村委員、そしてしきだ委員からるる御意見をいただきました。
保健師教育の大学院化、これはもちろん世のトレンドもございますけれども、やはり県立保健福祉大学そのものが、要はほかの養成校とのその、差別化ではないですけれども、何を目指しているかというと、やはりこれは、これまでも答弁させていただいたとおり、現場の特にリーダーとなれる人材を養成していきたい。その中で保健師は、では、どうしたらリーダーになれる保健師を育成するかという中で、カリキュラムを考えて、やはり大学院化がいいなと、こういう判断をしたところでございます。これは御理解いただきたいと思います。
また、もう一つ御指摘をいただいた量の問題。これはやはり、一つは、もちろんその中での量ということもあります。県内全体でも、先ほど答弁しました役割分担というところもあると思います。これは、今回議会からも御意見いただいたことをしっかりと大学に伝えるとともに、いろいろな、10校で養成校ございますので、そうした中でどういうふうに量を確保して、しかも潜在保健師本当に多いんですね。多い上に、潜在看護師は、これ離職しているので分かりやすいといいますか、潜在保健師は、資格持っているけれども看護師として働いている方が多いのですごく分かりづらいんです。ですので、その辺も分析して、どうやって、持っている人に保健師になっていただくかということについてもしっかりと連携して分析をして対応してまいりたいと考えております。
自由民主党 神奈川県議会議員:大村 悠