議会日:令和8年6月30日【 総務政策常任委員会 質問】答弁要旨
「科学技術イノベーション政策」

神奈川県科学技術イノベーション政策大綱の策定についてお伺いをします。
先日の本会議において、会派から質問し、知事からは、次期大綱では課題解決を起点に、県民目線に立ち、科学技術を県民生活の向上と新産業の創出につなげる方向性を明確にすると答弁がありました。
また、今回、大綱骨子案が報告されましたが、科学技術イノベーションという言葉は県民にとってやや分かりにくい面もあります。大切なのは、科学技術を研究機関や企業の中だけにとどめるのではなく、県民生活や地域の課題と結びつけて、実際に社会で使われる形にしていくことであると考えております。
そこで、大綱の基本的な考え方を確認した上で、具体の取組を何点かお伺いいたします。
科学技術の推進については、国が基礎研究や大型研究開発を担っていると承知をしております。その中で、県の役割は、県民にとってもやや分かりにくい面もあると考えますが、県で科学技術政策を進める役割については何なのか、お伺いします。

国は、科学技術イノベーション基本計画に基づきながら、大学や研究機関への研究費の配分、また基礎研究、大型研究施設の整備、宇宙・量子・核融合など国家的な研究開発を進めております。
一方で、県の役割としましては、国の研究成果や大学、企業の技術を県民生活や地域の課題解決に結びつけることになります。具体的には、県民ニーズや現場の課題を把握し、市町村や大学、企業、県の試験研究機関などをつなぎながら、実証の場の調整や関係者間のコーディネートを行うことでございます。
国は、科学技術の土台となります研究開発を支えながら、県はその成果や技術を地域の現場に引き寄せて、県民が実感できる課題解決や新産業の創出につなげる、こういった役割を担うものと考えております。

県は、研究自体に投資するのではなく、地域課題を把握して、つなぎ役、そして実装支援が中心であるということを確認させてもらいました。
その上で、地域経済の活性化と地域課題の解決の両面を求めていくと、併せて確認をしましたが、報告資料では、視点として、県民目線・現場目線が示されております。科学技術政策といいますと、先端技術が注目されがちですが、この視点を大綱に位置づける理由についてお伺いします。

御指摘のとおり、科学技術政策といいますと、研究開発等で生まれた優れた技術を支援するといったイメージがございますが、こうした基礎研究や大型研究開発については、国の基本的な役割と承知しております。県としては、優れた技術をどう使うかという発想ではなく、県民や市町村、地域の企業等と対話をしながら、現場の声に寄り添い、大学や企業の技術、国の研究成果などをこれと結びつけていく、こういったことが重要だと考えております。これによって、科学技術を県民が実感できる成果につなげていきたいと考えており、そこで、次期の大綱では、県民目線・現場目線を重要な視点として位置づけたところでございます。

あわせて、今回報告資料でもありますが、科学技術イノベーション・エコシステム、何となく仕組みは理解できるものの、県民の皆様にとっては、この言葉だけ取っても、なかなか分かりにくい部分も認識されると思いますけれども、この大綱で位置づけるエコシステムとは具体的にどのような仕組みなのでしょうか。

エコシステムとは、大学、企業、市町村、県、こうした違う主体がつながりながら、技術を地域の課題解決に役立てる、こうした仕組みと考えております。
例えば、国が支援する大学の研究成果や、企業が開発したAIやロボット、衛星データや海洋技術、こういったものがあっても、それだけで地域の課題が解決するとは限りません。県が現場の課題を把握し、その課題に合う技術や関係者をつないで、実証を得て、社会で使える形にしていくことが必要だと思っております。
こうした取組を繰り返し、新たな技術や事業が生まれ続ける流れをつくる、これが大綱に位置づけたエコシステムの考え方になります。

仕組みにつきましては、今説明をいただいて理解をしましたが、やはり県民にとっては、実例をもって理解するということが何よりも重要だと思います。その視点から次の質問に移ります。
今回、報告資料では、重点的な研究目標例として、最先端医療、介護・福祉、エネルギー・環境、防災、資源・食料、ロボット・海洋・宇宙・AIなど、様々な分野が示されています。これらをどのように具体化していこうと考えているのか。

科学技術は、非常に幅広い分野に関わりますので、重点的な研究目標の例では、県民生活や地域課題の解決、新産業の解決につながる可能性がある分野を幅広く示しております。
今後、具体な取組を進める際には、県民や現場の課題、県内大学や企業の強み、県の持っております実証フィールド、国の政策動向や社会実装の可能性などを踏まえながら、検討していきたいと考えております。
特に、ヘルスケア、ロボット、宇宙、海洋など、県内に強みや実証の場がある分野につきましては、大綱で示した方向性に基づいて、関係部局が主導する部分も多い中、しっかりと連携をしながら、具体の事例をつくっていきたいと考えております。

具体の事例をつくっていきたいという答弁が今ありました。先日、県は、無線自律型水中ドローンを活用したブルーカーボン調査・クレジット創出実証について記者発表をしました。県内の藻場が約30年で半減している中で、船舶や潜水に頼らない測定手法を企業等と開発し、漁業団体によるブルーカーボンクレジット申請につなげるという取組であると承知をしております。
これは、大綱の中での社会実装の具体例であると考えますが、県としてこの取組、どのように評価をしているのでしょうか。

この取組につきましては、県内の藻場が減少しているという環境上の課題と、漁業者の負担を抑えながら、ブルーカーボンクレジットを創出したいという地域課題に対しまして、水中ドローン、水上ドローンという技術を結びつけたものでございます。これまで藻場の面積を測定する際には、船舶を出すため、天候に左右されやすい、また手間がかかるといった課題があり、また測定する際には、潜水士への負担や安全面、こういった課題がございました。
今回の実証では、船舶を出す代わりに、陸上から水上ドローンで藻場の海域まで航行し、そこから潜水士に代わって、自律航行する水中ドローンが藻場を測定する、こういったものでございます。こうした新たな技術を組み合わせた手法を、企業などと連携して開発をし、漁業団体によるブルーカーボンクレジット申請につなげようと考えているところでございます。
このような現場の課題を起点にして、企業の技術、大学等の知見、地域の実証フィールド、こういったものを結びつけて、社会で活用される仕組みまでつなげようとするものでございます。
科学技術イノベーション・エコシステムの具体例になり得る取組だというふうに評価しております。

この取組につきましては、先日、実際に視察をさせていただいて、漁業者からも有益な様々なご意見や声をいただいたところなので、私自身も可能性を感じている分野です。
そういった中で、この取組については、技術開発だけではなく、漁業団体や大学、企業、クレジット認証と販売先、様々な分野が関係するもので、単なる実証で終わらせないための取組ということも重要だと考えますが、そのあたりはどう考えているのでしょうか。

今回の実証で重要なのは、技術的な実証を継続的に使われる仕組みにしていく、こういったことが大事だというふうに思っております。水中ドローンで藻場を測定できたとしても、それが漁業団体にとって使いやすく、費用面でも持続可能であり、かつクレジット申請や販売、さらには藻場の保全活動の継続につながらなければ、社会実装として次につながっていくものにはなってまいりません。
そのためには、技術の制度や安全性だけではなく、測定のコスト、運用の体制、それから事務的な申請手続や販売先の確保、地域の合意形成、こういったものを一体的に考えて進めていく必要がございます。
県としては、関係する部局と連携しながら、企業や大学、漁業団体、関係機関の間に入って、こうした課題を整理をして、実証結果を社会で使われる仕組みに育てていくことが重要だと考えております。

ぜひとも、つなげるための取組もしてもらいたいと思います。
また、今回城ヶ島で実施をしたということなのですが、他の地域の漁業者など海に関係する方々の反応や声は、県としては聞いているんでしょうか。

今回、庁内で環境農政局と調整をしながら、この事業の取組を進めておりまして、水産関係の方々、またカーボンクレジット関係の方々からは、やはりこういった取組に関しては期待をしているという声はいただいております。

ぜひともこういった事例を有効事例として、横展開もそうですし、様々な知見につなげてもらいたいと思います。
この藻場再生の取組につきましては、海洋環境、漁業、脱炭素、ブルーカーボン、ロボティクスなど、様々な分野が重なるものであって、海洋分野の可能性を示すものであると認識をしております。次期大綱の中で、海洋分野をどのように位置づけていこうと考えているのでしょうか。

本県は、東京湾、また相模湾に面して、横須賀、三浦、湘南など多様な海域と沿岸地域を有している県でございます。また、横須賀には、海洋研究開発機構、国の海洋分野の一番大きな研究機関になりますが、JAMSTECという機構がございまして、海洋研究や海洋技術の面でも大きな強みを我が県は持っております。海洋分野につきましては、藻場の再生だけではなく、当然ブルーカーボン、沿岸漁業の省力化、海洋環境の把握、水中ロボットの活用など、環境、産業、防災、資源、こういった観点から幅広い可能性を持っていると考えているところでございます。
次期大綱では、海洋分野についても、県内の研究機関や企業、地域の実証フィールドを生かしながら、社会課題の解決と新産業の創出を結びつける重要な分野として整理をしていきたいなと考えているところでございます。

ぜひとも地理的な利点も生かして、こういう可能性を広げてもらいたいと思います。
こうした藻場再生や海洋分野での取組を進めるためには、先ほどの答弁もありましたが、技術と現場をつなぐ、いわゆるコーディネート人材が不可欠であると考えております。県職員が現場に入って、技術、企業、大学、漁業者、市町村をつなげなければ、実証も事業化も進まないと考えております。
次期大綱で、県職員のコーディネート人材育成をどのように位置づけているのでしょうか。

委員御指摘のとおり、科学技術イノベーションを進めるためには、技術を理解するだけではなく、現場の課題を把握し、関係者をつないで、実証から社会実装まで伴走できる人材が不可欠になります。特に、県職員は、市町村、大学、企業、地域団体、県庁内の関係部局など、幅広い関係者とつながることができる立場にございます。一方で、社会実装をするためには、課題の整理、技術の発掘、実証の設計、資材や資金面の理解、関係者との合意形成、こういった従来の連絡調整を超えた実践的な力が必要になってまいります。
このため、次期大綱では、県職員自らがコーディネート人材として役割を果たせるよう、教育から実証、社会実装の実践活動までを一気通貫で進める仕組みを検討していくことを考えております。

9月には、このイノベーション大綱の素案が報告される予定と聞いております。今回、様々確認した藻場再生のような具体事例や、海洋分野の可能性、コーディネート人材の育成を今後の素案にどのように反映させていくのか、お伺いします。

今後は、県民意見募集や科学技術会議での意見、また県議会での御議論を踏まえ、9月の素案報告に向けて、内容を具体化していこうと考えております。その中で、藻場再生における水中ドローンの活用のように、現場から得た技術を結びつけ、実証から社会実装につなげる事例は、大綱の方向性を分かりやすく示す上で重要だと考えております。
また、海洋分野については、環境、漁業、脱炭素、ロボティクス、新産業創出、こういったことが重なる分野でございますので、県内の研究機関や企業、地域の実証フィールドを生かせる可能性がございます。さらに、こうした取組を進める上で不可欠となるコーディネート人材の育成についても、素案の中でしっかりと検討していこうと考えております。引き続き、具体事例を積み重ねながら、次期大綱が実効性あるものとなるように策定作業を進めてまいります。

それでは、要望を申し上げます。
科学技術イノベーション政策は、理念だけではなく、県民や現場が困っている課題に対して、科学技術をどう結びつけ、実際に社会で使われる形にしていくか、ここを理解してもらうことが重要であると考えております。
その意味で、今回の水中ドローンを活用したブルーカーボン調査、クレジット創出実証は、大綱が目指す方向性を示す非常に分かりやすい事例であり、県内の藻場が減少する中で、漁業者の負担を軽減しながら、海洋環境の把握、ブルーカーボンクレジット、脱炭素、地域の収益化、さらには水中ドローン企業の成長までつながるものであり、科学技術の社会実装と言えるものであります。ぜひ、この取組については、積極的に発信もしてもらいたいと思います。
こうした事例を一つで終わらせないためにも、県職員自身が社会実装まで伴走できるコーディネート人材として育っていくことが重要であると考えます。コーディネート人材の育成については、実際のプロジェクトに関わりながら、外部人材や専門家と連携し、実践を通じて力をつける仕組みが重要と考えていますので、ぜひ検討してもらいたい。
新たな大綱が、県民生活の向上、地域課題の解決、そして神奈川県の新産業創出につながる実効性あるものとなるよう強く求めます。
自由民主党 神奈川県議会議員:大村 悠