グローバル教育とは何か
「グローバル教育」と聞くと、語学学習や留学、異文化理解などを思い浮かべる方も多いかもしれません。しかし、本質はそれだけではないと思っています。
グローバル教育とは、単に言葉を学ぶことではなく、「異なる文化や価値観の中で生き、学び、自らを見つめ直す力」を育むことだと私は考えています。
スイス公文学園で感じた「本当のグローバル教育」
今年(2025年)3月、神奈川県議会の県政調査としてスイスを訪問し、在外教育施設である「スイス公文学園」を視察しました。
この学校では、英語を主な言語として多国籍の生徒が学ぶ環境が整っており、授業だけでなく寮生活や学習旅行を通じて、多様な文化や社会に触れる機会が豊富にあります。印象的だったのは、生徒たちが自分の夢や学びについて、自信を持って語っていたことです。
「こんな国で、こんな体験をして、こんな思いを持った」と、体験を通じて深められた学びが言葉として自然に出てくる姿に、私は感動しました。
グローバル教育とは、まさにこうした「体験」と「内省」から生まれるものだと、改めて実感しました。
神奈川県が取り組むグローバル教育
神奈川県でも、「グローバル教育研究推進校」の指定により、神奈川総合高校や横浜氷取沢高校などでは、英語によるコミュニケーション能力を高め、国際的な視野を持ち、多様な価値観を受容できる力の育成に取り組みが行われています。
また、グローバル教育を国際教育と捉えて、
(平成23年度学校教育指導の重点から抜粋)
〇国際教育の目指すものは、日本と諸外国との文化や国籍の違いを超えた人間の尊厳について深く理解し、国際平和の実現と人類の福祉の向上に貢献するととともに、世界の人々と心を開いて交流することのできる人間を育成することです。その根底に流れるものは、「他者の存在とその理解」「協調、協力の精神」です。
(平成3・4年度神奈川県義務教育研究協議会のまとめ「外国人児童・生徒教育の在り方」について)から抜粋)
と記されています。
こうした理念のもと、神奈川県はグローバル教育を推進しています。その考え方に私も強く共感します。しかし、今後はより「体験」と「多様性」に重きを置いた学びが必要だと感じています。
グローバル=留学や語学力だけではない
グローバル教育を語るとき、どうしても「留学制度」や「語学の習得」に議論が偏りがちだと感じています。しかし、それは選択肢の一つにすぎません。
大切なのは、教科や言語の枠を超え、社会や他者と向き合う経験を積み重ねること。そして、その過程で自分自身の考えや価値観を深めていくことです。
また、こうした教育を支えるためには、教員間の共通認識の形成や、学校全体としての柔軟な姿勢も求められます。社会の変化が加速する中で、教育現場も進化が必要です。
外部連携によって可能性を広げる
今、学校現場の先生方は非常に多くの業務を抱えています。カリキュラムの実施、生活指導、保護者対応、部活動の指導など、時間も体力も限られています。
だからこそ、外部団体や企業と連携し、専門的な視点や社会との接点を取り入れることが重要です。
多様性に触れる場、国際的な活動の実践例などを共有してもらうことで、子どもたちの学びがより深く、現実的なものになります。
教育の持続可能性と行政の役割
スイス公文学園もそうですが、こうした体験型・国際的な教育などを進める在外教育施設の運営は、決して容易ではありません。
教育機関や子ども支援の現場では、常に「持続可能性」が課題となります。
そのためにも、行政がどう支えられるか、どう一緒に学びの場をつくっていくかが問われています。神奈川県として、あるいは国として、子どもたちの未来のためにどんな環境を整えられるのか、引き続き問い続け、取り組んでいきたいと思います。
グローバル教育を未来のスタンダードに
「国際競争力の低下」が語られる今、グローバル教育は一部の特別な取り組みではなく、すべての子どもたちに必要な“学びのスタンダード”だと私は考えます。
地域、企業、行政、教育現場がそれぞれの強みを持ち寄り、共に子どもたちの未来を支える体制をつくること。その先に、多様な価値観を理解し、世界とつながる力を持った人材の育成があると信じています。神奈川県のグローバル教育のビジョンを共有しながら、引き続き多くの方々と力を合わせ、前に進めていきます。
神奈川県議会議員:大村悠