2026年3月に国が策定した観光立国推進基本計画では、観光産業は自動車産業に次ぐ「第2の輸出産業」であり、日本経済や地域経済の成長を支える「戦略産業」と位置付けられました。人口減少が進む日本において、地域の外から人とお金を呼び込む観光の役割は、これまで以上に重要になっています。
その中で私がこれまでも訴えているのは、観光客の人数だけではなく、「観光消費額」を増やしていく視点です。地域でお金が使われ、地域の事業者や住民に還元されてこそ、観光は地域の力になります。

宿泊者数を増やすための取組
神奈川県ではこれまで、宿泊者数を増やすために様々な取組を進めてきました。
例えば、朝の時間帯を活用した「モーニングタイムコンテンツ」や、夜の消費を促す「ナイトタイムエコノミー」の造成です。
日帰りではなく宿泊してもらうことで、飲食や買い物などの消費機会を増やし、地域経済への効果を高めることが狙いです。
こうした方向性自体は重要だと思います。しかし一方で、施策を進めるからこそ、その効果をしっかりと検証していくことも必要です。
観光は天候や社会情勢、交通環境など様々な要素が影響するため、効果検証が難しい分野でもあります。それでも、実際に何が起きているのかを見つめることが必要です。
現場の声から見える課題
私が観光業界の方から伺った話の中で、非常に印象に残っているものがあります。
ある事業者は、宿泊客を増やすことを目的に早朝型の観光コンテンツを造成しました。しかし実際には、数万円をかけて東京都内の高級ホテルに宿泊し、そこからタクシーで来場する観光客が少なくなかったというのです。
つまり、神奈川県内で観光を楽しんでいても、宿泊は東京で行われているケースが存在するということです。
この現実にはしっかり向き合う必要があります。
海外旅行をする時のことを考えてみても、多くの人は「都市」のイメージで行動します。例えばパリやロンドンに滞在し、その周辺地域を観光することは珍しくありません。
同じように、海外から見れば東京と横浜は一つの大きな都市圏として認識されている可能性があります。
そうであれば、「横浜だけ」「鎌倉だけ」と個別に考えるのではなく、もっと広い視点で観光戦略を考える必要があります。

神奈川全体で稼ぐ観光へ
私は、宿泊者数を増やす鍵は県西地域や湘南、三浦半島などを含めた神奈川県全体の魅力にあると考えています。
実際に箱根では宿泊者数が増加しており、東京との差別化にも成功しています。もちろん温泉という強力な観光資源がありますが、それだけではありません。自然、歴史、文化といった地域の魅力を分かりやすく発信し、滞在価値を高めてきた成果でもあります。
神奈川県には、横浜の都市観光、鎌倉の歴史文化、箱根の温泉、湘南の海、三浦半島の食や自然など、多彩な魅力があります。
これらを個別に売り出すのではなく、一つの「かながわブランド」としてつなげることで、県内を周遊してもらい、宿泊や消費につなげることができます。
観光は行政区域で区切るものではありません。
市町村の枠を超え、地域間で連携しながら神奈川県全体の価値を高めていくことが重要です。
データと現場の声を大切に
観光政策を考える上では、宿泊者数や観光消費額などのデータ分析も欠かせません。
しかし、それと同じくらい重要なのが現場の声です。
数字だけでは見えない観光客の行動や事業者の実感、地域の課題があります。
私はこれからも、データに基づく分析と現場の声の両方を大切にしながら、「地域が稼ぎ、地域に還元される観光」の実現に向けて取り組んでまいります。
神奈川の魅力を神奈川全体の力へ。
そんな観光政策を目指していきたいと思います。

神奈川県議会議員:大村 悠
▼関連政策はこちらから▼