民泊新法と観光の新しいかたち
近年、外国人観光客の増加に伴い、宿泊施設の多様化が進んでいます。
その流れの中で、2018年に「住宅宿泊事業法(いわゆる民泊新法)」が施行されました。
これにより、一般の住宅でも届出をすれば宿泊受け入れが可能となり、ホテルや旅館とは異なる観光スタイルが広がりました。
日本における民泊の文化は、実はもっと以前から存在しています。
1960〜70年代の観光ブーム期には「民宿」が広がり、地元の家庭が旅行者を受け入れることで、地域の温かさや文化を伝えてきました。
つまり、民泊とは単なる宿泊事業ではなく、「地域の人と文化にふれる体験の場」としての側面を持っています。
金沢区が「逗留のまち」と呼ばれた時代も
金沢区は、かつて「逗留(とうりゅう)のまち」として知られていました。
作家や政治家、文化人が、旅の途中に一時的に滞在して、思索や執筆にふける場所としてこの地を選んだと言われています。
宿泊でも別荘でもない、「しばらく住まうように滞在する」という感覚、それが逗留の文化です。
私自身、ここで生活して感じるのは、金沢区が今も変わらず自然や海、山、そして街が近い、暮らしやすい環境を持っているということです。
当時の人々がこの地を選んだ理由は、今も息づいていると思っています。
だからこそ、金沢区には「民泊」や「逗留型観光」という形で、もう一度この地域の魅力を再発見できる可能性があるとも考えています。
民泊の可能性と地域の現実
一方で、民泊の拡大は課題も抱えています。
騒音やごみの放置、マナー違反など、周辺住民の生活環境に影響を及ぼす事例も報告されています。
実際、民泊が盛んな地域では、新たな施設の設置に反対する声も少なくありません。
観光振興の観点だけで民泊を推進するのではなく、地域の生活とのバランスをどう取るか、共存していくことが重要です。
「観光客の増加=地域の豊かさ」ではなく、「地域が豊かだからこそ観光が生まれる」という視点を忘れてはなりません。

行政の責任と、地域との共生に向けて
県としてまず取り組むべきことは、既存の民泊事業者や管理業者に対して、適切な運営・管理を促すことです。
迷惑行為やトラブルの状況を国土交通省・観光庁と共有し、県や市町村と連携して実態に応じた対策を取りまとめていく必要があります。
また、市町村から条例による民泊の制限を求める声もある中で、地域ごとの実情を踏まえた指定・基準の在り方を検討していくことも重要です。
行政には、「推進」と「抑制」の両輪の視点が求められます。
経済的な活性化だけでなく、地域の安全・安心・生活環境を守る責任を果たすことが、結果として持続可能な観光につながります。
住民の声に耳を傾けながら、現場感を大切に、持続可能な民泊・観光政策に取り組んでいきます。